あおの世界は紫で満ちている

自分の趣味にどっぷり沈み込んだ大学生のブログです。歌舞伎と宝塚も好き。主に観劇レポートなど。

MURDER for Two マーダー・フォー・トゥー感想

2022126() 1830分〜

 

 grooveコン以来の現場、そしてエンカ。Oslo以来の舞台。前日から胸が高鳴っていた。

柄にもなく丁寧にネイルをし、精一杯の一張羅を身につけ、なれない化粧を施して向かった森ノ宮ピロティホールはなんだかとても輝いて見えた。

 

 開場時間よりも30分ほど早く列に並び、チケットを用意し、友達と「楽しみだねぇ」と語り合う。周りにはV6のグッズを持った方やFCのチケットを持った同士と思われる方々ばかり。

あぁ、もうすぐ坂本くんに会えるのだと緊張は最高潮を迎えようとしていた。

 

 1745分。開場。

 検温とアルコール消毒をすませ、もぎりのお姉さんにチケットを渡して中に入り、すぐさまパンフレットとブリーフケースの列に並ぶ。

 Osloの時は事前にパンフレットを読まなかったことを後悔したので、今回こそはと意気込んで買った。

 

 そしていよいよホールの中に入る。

 するとどうだろうか。もう既に幕は開いていた。舞台上にはセットが準備され、さぁ!今からここで物語が展開されます!と言わんばかりの状態である。胸の高鳴りと興奮は最高潮に達した。

 

 チケットと照らし合わせて座席に座って驚いた。近い。とても近い。こんなに正面から、こんなにも近くからミュージカルを観劇した経験はない。感動した。

 

 高鳴る鼓動と焦る気持ちを抑えつつ、パンフレットに目を通す。しっかりとキャラクターを把握した上で観た方が物語を存分に楽しめると考えたからだ。その考えは正解だった。

 

 客席の照明が落とされ、いよいよMurder for two が始まる。

 

 両脇に設置された扉から坂本くんと海宝くんが登場する。2人でピアノを取り合ったり、邪魔し合いながら連弾する姿はコメディ感に溢れていて、これからコメディミュージカルが始まるぞという合図に感じた。

 

 メガネをかけ、腰を落として老女を演じる坂本くん。次々と舞台に現れるのは坂本くんなのに、全て違う役と言うカオス。

最初は混乱したものの、その演技力によってすぐに見分けがついた。

 

 ダンスのような舞台だなと感じた。精密に計算された無駄のない動き。マーカスの影に隠れるときや、すれ違う時にサッとキャラを変える芸当はまさに百面相。歌いながら踊り、踊りながら喋り、演奏しながら演技する。23つのことを同時にしなければならない。

 間違いなく、日本でこの役をこなせるのは坂本昌行を除いて他には居ないと、そう思わされた。本当に、ダンスのような舞台だった。

 

坂本くんは、器用に演技をする人だと思う。

台本に忠実にしかし時に遊び心を入れつつ、演技に不自然さがない。そして綺麗な演じ分けと、さりげなく残されている「坂本昌行」の片鱗。私はこれを『器用な演技』と表現したい。

 

 マーダーは観客巻き込み型の舞台だ。「ルー」に話しかける時は基本的に観客席に向かって話す。この時点で私は観客=ルーと想定されているのだな、と感じた。きっと、その思惑もあるのだろう。そして、何よりもこの舞台の特質としてあるのは随所に散りばめられた「メタ要素」だ。

 ステフの「まだあたしぃ」というセリフや、「海宝直人」が「坂本昌行」に「出番ですよっ!」と合図する場面。そして「坂本昌行」と「海宝直人」による客席への注意や、それが役である夫人にまで引き継がれていた点。そして極めつけは「スタッフを呼んできてください!」という反則ともとれるセリフ。空想とリアルが入り交じる。

 

 演劇の世界観に入り込んで観るか、1歩下がって俯瞰して観るか、それによって舞台の感じ方も変わるだろう。だからこそ、何度も観たい舞台でもある。

 

 舞台において演出の要となるのは照明だと思う。マーダーに置いてはそれが顕著だ。キャラクターのイメージカラーで、坂本昌行が今どの役を演じているのかを表し、第3の人物である被害者や犯人を照明で表していた。

また、何かを閃いた瞬間のアニメのような電球を照明で表したり、ショータイムと言わんばかりの場面では煌びやかに瞬いていた。大仰な舞台転換が無い分、照明と役者の演技力で魅せるという、シンプルかつ難易度の高い、とても洗練された舞台であると感じた。

 

 『殺人』をテーマとした舞台であるが、全体はコメディ要素に溢れ、観客席からは絶え間なく笑い声が響く。拍手で演者に答え、演者は演技で語りかける。本当に観客がいてこそ成立する舞台だと感じた。

 

 1人で12役を演じ分けた坂本昌行は本当に器用であるし、それを補佐し、また舞台を色鮮やかにした海宝直人の演技力・歌唱力も確かなものである。本当に完成された素晴らしい舞台であった。

 

 今回は初見であり、舞台装置や演出に気が散ってしまった部分も多かったが、観劇後の満足感は本当に言いようも無いものであった。これからさらに2回も観られると思うと胸が高まるし、さらに見方が変わると思うと楽しみでしかない。

 

 日本でも指折りのミュージカルスターがV6にいる、20th Centuryにいる、と言う事実がたまらなく嬉しく、そして誇りである。と改めて感じた。

 観劇後の森ノ宮ピロティホールは観劇前よりずっともっと、輝いて見えた。本当に、いい一日であった。

 

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